スノーデン

スノーデンの内部告発の実際から現在までを追う



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PRISM(プリズム)

2013年、スノーデンは、NSA(アメリカ国家安全保障局)がPRISMにより盗聴を行っていた事実を告発します。

PRISM(プリズム)とは米国が極秘に行っていた監視プログラムです。

NSAはこのPRISMにより電話回線傍受とインターネット傍受を行い情報を収集していました。

電話回線の傍受は大手通信事業者の協力で行われており、インターネット傍受はMicrosoftのSo.cl、Google、Yahoo!、Facebook、Apple、AOL、Skype、YouTube、PalTalk、大手9社のウェブサービスが協力していたことが、スノーデンの資料により一部明かとなります。

NSAが収集していた情報は、ユーザーの登録情報や電子メール、文書、写真、利用記録、通話などとあらゆるメタ情報です。

IT企業の実際の協力

イギリスの新聞「ガーディアン」によると、MicrosoftはNSAが傍受できるようにチャットを暗号化しなかったり、ユーザーに貸し出されたオンラインストレージへのアクセスを可能にするなど傍受に協力していたとのこと。Microsoft側は「法律を順守している。顧客情報の提供も法律に従って行っている」と違法性を拒否します。(参考:毎日新聞)

「The NewYork Tims」は、シリコンバレーに拠点のある数社が秘密のチームを結成して、NSAのアスセスを助勢する任務に当たっていたと報じました。SkypeはNSAなどの機関に「Skype通話を簡単に引き渡すための法的および技術的問題」に取り組むチームを組んだと話しました。(参考:CNET Japan)

Facebookは2012年後半6ヵ月間で政府関連機関から受けた情報提供の要請件数は9000から1万件で、1万8000から1万9000のユーザーアカウントに関するものだったと述べてます。(参考:Newsweek)

アップル・コンピュータは「ユーザーのプライバシーに関するコミットメント」という声明を発表しています。そこでは、「政府からの情報提供要請を受けているのは事実」だとして「2013年5月までの半年間に、当局から4000から5000の要請があった」としながらも「その大多数は失踪した子供の捜索、認知症の高齢者の捜索、盗難事件の捜査、自殺の防止など」だとしています。そして「全てのケースに関して、社内のコンプライアンス専門家のチェックを受けてから情報提供をしており、拒絶することもある」と。

このような事実を内部告発したスノーデンとはどのような人物だったのでしょうか。

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エドワード・スノーデン

1983年生まれ、告発した年齢は29歳でした。父は米国沿岸警備隊。16歳の時に両親が離婚し、母親とメリーランド州に住みます。

スノーデンは病気のために高校を退校した後に、高等学校の卒業証書であるGEDを取得し、単科大学で計算機科学を学びます。

ウェブサイト「アルステクニカ」の常連投稿者であったらしく、ロイターによると、2001年、スノーデン18歳頃より「The True HOOHA」というユーザーネームで投稿していたとのこと。ゲーマーであり、ITスキルと知性のある投稿者で、NSAや銃についての投稿もあったようです。日本のゲームやアニメ、漫画を好み、日本語も独学で覚えます。

NAS:アメリカ国家安全保障局、アメリカ国防総省の諜報機関。本部はメリーランド州。

「The True HOOHA」の最後の投稿は2012年5月21日。その1年後の2013年6月にスノーデンは内部告発します。

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スノーデンの経歴

2004年 アメリカ合衆国軍に入隊/22歳

対テロ対策で米軍は多くの志願者を募っていた頃。スノーデンはイラク戦争の特殊部隊(技術担当兵)として訓練していましたが、骨折のために除隊します。

2005年 NSAからスカウトされる/23歳

メリーランド大学言語センターの警備任務を行います。

2006年 CIA職員となる/24歳

コンピューターセキュリティ関連の任務に従事します。

2007年 スイス・ジュネーヴに派遣される

国連のアメリカ国連使節の随行員として派遣されてます。

2009年 CIA辞職、DELLの主任技術者となる/26歳

横田基地で勤務し、サイバー戦争に対する指導を行います。

2011年 CIAに出向する(メリーランド)

2012年 ハワイのNSAで主任技術者となる

2013年 DELLよりブーズ・アレン・ハミルトン社に転職/29歳

NSA(ハワイ)での勤務は快適で、恋人もおり、20万ドルの年収を得ていたとのこと。その快適な生活を捨てて内部告発に踏み切ります。

スノーデンの告発に至る理由・キッカケ

2012年 NSAの長官が情報収集したアメリカ人の人数の公表を拒絶する

2013年 アメリカ合衆国国家情報長官は情報収集しているかの質問に「いいえ」と答える

2012年、NSA長官ケイス・アレクサンダー将軍は情報収集されたアメリカ人の人数の公表を求められるが、長官は拒絶します。

2013年3月には、「NSAはアメリカ人に関するデータを収集していますか?」という質問にジェームズ・クラッパーアメリカ合衆国国家情報長官は「いいえ」と答えます。(参考:https://www.theguardian.com)

そして2013年6月にスノーデンは告発します。

スノーデンの内部告発に至るまでの経緯

2012年12月 ジャーナリストに情報提供

2012年スノーデンは匿名「キンキナトゥス」で、ジャーナリスト、グラン・グリーンウォルドにメールを送ります。スノーデンは暗号化ソフトPGPをインストールすることを条件に情報提供することを持ち掛けますが、グリーンウォルドは手をつけずに見送ります。

2013年4月18日 ポイトラスからグリーンウォルドへ情報提供

スノーデンはドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラスに匿名「Verax」でメールを送ります。ポイトラスがグリーンウォルドに情報を伝え、グリーンウォルドとスノーデンの折衝が始まります。

送付されてきたPRISMなどの文書を見たグリーンウォルドは事の重大さを知り、イギリスの大手新聞社「ガーディアン」の組織的なサポートが必要だと判断します。ガーディアンはユーウェン・マカスキル記者を同行させるよう要求。グリーンウォルドとポイトラスとマカスキルの3人はすぐに香港行きを決意します。

2013年5月 データをコピー

ハワイのオフィスでデータをコピーした後に病気治療(てんかん)のために3週間の休暇が必要だと上司に伝え香港へ旅立ちます。

2013年6月3日 九龍のホテル

スノーデンはグリーンウォルドとポイトラス、マカスキルと会い、告白インタビューを撮ります。この時、ワシントン・ポストにも情報を流していましたが、記事にすることに慎重であったため、第一報はイギリスの大手新聞である「ガーディアン」となります。

ガーディアンも顧問弁護士の反対があり慎重でしたが説得により、6月6日、NSAの「PRISM」による盗聴の実態の内部告発記事を公開します。

スノーデンの支援者

逃亡生活を支援しているのはウィキリークスのジュリアン・アサンジです。航空機や宿泊先、弁護士の手配、通信の確保などサポートしている事実が明らかにとなっています。

ジュリアン・アサンジは内部告発や情報漏洩の情報を伝えるウェブサイト「ウィキリークス」の創始者です。

アサンジはスウェーデンで国際指名手配され2010年にイギリスで逮捕、2012年保釈中にエクアドル大使館に逃げ込んで、現在までイギリスのエクアドル大使館で生活しています。エクアドルは2018年1月にエクアドルの国籍を与えていますが、イギリスは大使館を出た場合、アサンジを逮捕する方針とのこと。

バウンドレス・インフォーマント

NSAが電話回線やインタネットを傍受して得たメタデータの量を国毎に表示し、記録・分析する極秘のソフトウェアであり、各国のデータがヒートマップで表示されます。

2013年スノーデンの内部告発により、ガーディアンがバウンドレス・インフォーマントを公表しました。

ヒートマップは、情報収集量が一番多い順に赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑で表示されます。

2013年3月の情報収集量

スノーデン

The Guardianより

コンピュータや電話網から収集した膨大な量の情報を国別に細かくマップしています。

バウンドレス・インフォーマントは、2013年3月に世界中のコンピュータネットワークから970億の情報を収集したことを示しています。

イラン・パキスタン・ヨルダン
オレンジ エジプト・インド
黄色 中国・アフガニスタン・イラク・サウジアラビア・ケニア・ドイツ・アメリカ
黄緑 トルコ・イエメン・ブラジル
日本

2013年3月の収集したデータ量

収集したデータ量
イラン 140億件/月
パキスタン 135億件/月
ヨルダン 127億件/月
エジプト 76億件/月
インド 63億件/月

電話盗聴の対象となった35人

ガーディアンはスノーデンが持ち出した極秘文章を基に、NSAは同盟国や友好国を含む38ヵ国の大使館に対しても日常的に盗聴が行われていたと報じます。

その手法はEU代表部の場合、盗聴器と特殊なアンテナが仕込まれ約90人の職員のパソコン内のデーターが見られたとのこと。(参考:MSN産経ニュース)

また日本、ブラジル、フランス、ドイツのアンゲラ・メルケル首相など、国家の行政権を担う人物35人が、電話盗聴の対象になっていたこともメディア各社は報道しています。

各国の非難

フランスのオランド大統領は「同盟国に対するこのような行為は容認できない」と非難。ドイツ政府報道官は「全く容認できない」と事実関係の釈明を米国に求めます。日本は「日米間の外交においては、しっかりと秘密は守られるべきだ」と述べ、欧州各国の首脳からは抗議が相次ぎました。

オバマ大統領は各国駐米大使館への盗聴に対し、「情報機関がある国はどこでもやること」と理解を求めます。

スパイ容疑で逮捕/ドイツ

2014年、連邦情報局局員(ドイツの情報機関)とドイツ連邦軍職員がスパイ容疑で逮捕され、アメリカ大使館の情報担当書記官がペルソナ・ノン・グラータ指定(国外退去処分)されます。

PRISMに関する連邦議会の調査活動内容を米国に流していたとして逮捕される。

PRISMの監視対象にならない国

UKUSA協定のイギリスは監視対象外であり、NSAとイギリスのGCHQは姉妹機関であるとする報道もありました。

UKUSA協定に加盟する国

イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ

UKUSA協定は米国のNSA(国家安全保障局)やイギリスのGCHQ(政府通信本部)など5カ国の諜報機関が諜報活動の設備や盗聴情報を相互利用・共同利用するために結んだ協定です。

内部告発後のスノーデン

2013年6月9日、内部告発の情報源はエドワード・スノーデンであることを明らかにします。

スノーデンはアイスランドへの政治亡命を求めますが、アイスランド政府は言及を避けます。

FBIは情報漏洩罪など数十の容疑で捜査、2013年6月22日に米司法当局によりスノーデンに逮捕命令が出され、米国政府はスノーデンのパスポートを無効にし、指名手配とします。パスポートを無効にされたスノーデンは、国際法上香港を出国できない状況となります。

米国政府は10日より香港政府とスノーデンの追放交渉を行っていました。市民や香港在住の欧米人、一部の議員は在香港米総領事館前でスノーデンへの支援を訴えたデモを行っています。

ロシアへ

2013年6月23日、香港政府はパスポート無効の手続きに不備(米国側がスノーデンのミドルネームを間違える)があるとしてスノーデンのロシアへの出国を認め香港国際空港からモスクワのシェレメーチエヴォ国際空港へ移動します。

この措置に対して、米国は「スノーデン氏を逮捕してほしいという米政府の要請を香港が拒否したことは残念だ」と述べますが、香港側は中国政府を代表する人物がスノーデンに香港を発つように求めたことを伝え、中国政府は「中国がサイバー攻撃の犠牲者ということが再び証明された」と、「香港特区の決定を尊重する」旨も明かしました。(東亜日報)

その後、ロイターによるとスノーデンは20カ国以上に亡命申請を出しています。

2013年6月24日、エクアドルはスノーデンの亡命申請に対し、「現在検討中」と亡命を許可することを示唆します。

当時スノーデンはキューバの首都ハバナ行きのチケットを持っていて、ロシアからキューバ経由でエクアドルへ行けばスノーデンの検挙は難しくなるだろうとワシントンポスト紙は報じています。

ロシアの対応/空港乗り換え区間に滞在

米国政府はロシアにスノーデンの拘束を求めるが、ロシア側はこの問題に介入するつもりはないと述べます。

スノーデンは空港の乗り換え区画に滞在しており、ロシアに入国していない状況でした。

ラブロフ露外相は、スノーデンの居る場所はロシアの司法権は及ばない区画であり、アメリカの拘束要求には法的に応じられないと説明した。またプーチン大統領は、スノーデンを仮に拘束した場合であっても「米露間には犯罪者引渡しに関する協定が無いので、アメリカへの身柄引き渡しを拒否する姿勢」を明らかにした。

2013年6月末、ロシア側は、米国に損害を与える活動をやめることを条件にスノーデンの亡命を受け入れる姿勢を見せますが、スノーデンはロシアへの亡命申請を撤回します。

7月12日、ロシアの人権活動家らと面会し、安全の確保のために一時的に亡命者としてロシアに留まることと、今後米国に損害を与える活動をしないことを記者会見で語ります。

2013年8月1日、ロシア連邦移民局から一年間の滞在許可証が発給されます。

ロシア亡命後のスノーデン

  • 2013年8月 ロシアに1年間の滞在許可
  • 2014年7月 滞在期間延長申請により3年間の居住権を得る
  • 2017年1月 2020年まで居住許可延長

2017年2月10日、米NBCテレビは、「ロシアがトランプ大統領へのプレゼントとして、スノーデン氏の引き渡しを検討」しているという報道も流れましたが、現在、スノーデンは恋人であるリンゼイ・ミルズさんとモスクワで暮らしており、リンゼイ・ミルズさんはそこでの生活の写真をインスタグラムに投稿しています。

FSBとスノーデンの秘密合意があるのではないかという疑いついては、ロシア連邦保安庁(FSB)から安全上監視はされているが、FSBに何の情報提供もしていないと断言しています。

スノーデンロボット

映画の中でも出てくるのがスノーデンロボット。2016年にはロボットやインターネットを使い世界50ヵ所以上で講演しています。

東大・本郷キャンパスでのシンポジウムにもインターネット中継(ロシアー東京)で参加しています。

恩赦

オバマ大統領は退任直前の2017年1月17日に、任期中最後の恩赦を発表します。受刑者209人に減刑を、64人に恩赦を与えますがそこのスノーデンの名前はありませんでした。

オバマ米大統領は18日、政府等の内部文書を公開する民間サイト「ウィキリークス」に機密文書を提供し、米軍法会議で禁錮35年の判決を受けて服役中のトランスジェンダー(性別越境者)の陸軍兵士チェルシー・マニング受刑者の刑を約7年に減刑すると発表した。

スノーデンの恩赦の署名活動は110万人を超えていますが、ホワイトハウスの報道官ジョン・アーネストは、2016年9月に「エドワード・スノーデン恩赦のために権限を行使する予定はない」と声明を出し、2017年1月17日には「スノーデン氏は、民主主義を脅かそうとしている敵国へ逃げ込んだ」と発言しています。(参考:BUSINESS INSIDER)